心温かい室生の里

5月4日(土)

前夜京奈和道PA車中泊。近くの車が夜中に音楽を掛けている。目が覚めると眠れず、1:30場所を移動し、西名阪入り口PAへ。車の少ない隅に停車する。トラックのアイドリングが気になるが音楽よりはまし。仮眠し目が覚めると他にスペースはあるのになぜかトラックがすぐ横でアイドリング。

 

5:30発 名阪国道 針テラス車中泊の人で溢れかえっている。

顔を洗い室生寺へ向かう。室生寺までの道は平たんな森の道。新緑が瑞々しい。

途中、道を3頭の鹿が横切り森の中からこちらを見つめている。今の時間森は、動物と植物だけの世界なのだろう。

6:30 室生寺駐車場。身支度をし、車を片付け歩き始める。門前の商店の人が開門は8時だと教えてくれ、自分の駐車場に無料で止めろと言ってくれる。親切がありがたい。里山の傾斜に棚田。草や木の隙間を埋めるように民家が立つ。車一台がやっと通れる細い道が民家を縫うように頂上へと延びる。すべてが自然のままに調和している。

里の中の小道をぶらぶらと歩く。苔むしたような高台のベンチで本を読む。

森はまだ眠っている。木の葉一枚動かない。時間が止まったよう。朝日が当たり緑が輝きだす。鳥の声がする。植物に朝を告げているようだ。

 

8時に門前の橋に着くが開門は8時30分と分かる。この後素晴らしい出会いが待っていようとは‼

目の前の里の小道を登ってゆく。斜面の小さな畑を朝早くから耕しているご主人。

怪しい者ではないと挨拶をしたのがきっかけで、近くの龍穴神社を紹介してくれる。

畑の前の自宅に車を止めればいいと言ってくれる。車を取りに500m程歩いているとパンフレットを手にわざわざ追いかけてきてくれた。親切が身に染みる。

 

龍穴神社は道横の森の中にひっそりと佇む。立派な石段があるわけではないが広い境内は掃き清められすがすがしい。神聖な空気がそこにあった。山道を車で登りこの神社の源、龍穴と、滝に向かう。そこは確かに神域だった。

巨大な一枚岩を滑り落ちる滝。滝の下には四阿。正面の絶壁にまるで何かが這い出したように開いた穴。トンネルの様でも、横穴でもない。穴の中を覗いていると龍の目が

きらりと光りそうだが、それは決して不気味な感じではない。

身が引き締まり思わず手を合わせる。帰る途中出会った男性はここがパワースポットで悩みがある時よくここに来るらしい。

 

言葉に甘え先ほどのお宅に駐車をお願いする。室生寺は見事な青紅葉とシャクナゲに彩られ時の流れを語っていた。

帰ってくるとお茶を勧められ図々しくもお邪魔する。大事にされた古民家。玄関上の漆喰の龍の飾り。雨戸は手の込んだ柵づくり。広い土間。昔ながらの風情ある続き間の和室。大事に大事にされた古民家。

畑仕事の手を止めたのではと気にしたが、なんと朝5時から初めてもう一服らしい。

お寺の感想などの話がよく合う。こちらの事は一切詮索しない。

ご主人が作った山菜ごはんまで御馳走になる。

蕨ごはん、筍の木の芽和え、うどの酢味噌あえ、野ふきと山椒の佃煮。山椒好きの私にはたまらない。

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心の籠った春の御馳走

具なし味噌汁に卵を落とし軽く固めた上に三つ葉を散らした汁物。

三つ葉が香り立つ。全てさりげない。途中奥様が出てくる。

病気がちで、昨日はお孫さんがきて張り切り疲れていたらしい。気さくな良い方。

素敵なご夫婦。お礼のお茶を送りたいと住所を聞くがどうしても教えてくれない。

ご縁があればまた会えます。その分を他の人に返してくださいと言われる。もしかしてこの方達は土地の神様では!

帰り際拝見したお庭も見事。奥様がお花好き。種から育てるらしい。珍しい花の数々。

今日咲いたという珍しいラン。ボタンの蕾がほころびかけている。

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庭木の間にひっそりと咲くラン。毎朝眺めてもらって幸せだろう。

離れがたくしばらく庭にいるが出発しなくては。見送を背に受け涙が出そうになる。

 

帰り道長嶋SAでの事。刈谷までと看板を持ったヒッチハイクの学生2人がいた。一度は通り過ぎるが、今日の親切を思うと引き返し車に乗せる。

室生のご夫婦の話しをすると自分たちをお返しをしなくてはと話は通じる。お互いそう思う気持ちが同じ事が嬉しい。

 

この旅で出会った人たち。天気予報で各地の名前が出るたびに思い出す。ご縁があったらまた会える。それまで精いっぱい生きよう。