シャクナゲと青紅葉彩る室生寺

令和元年5月4日(土)

山門を抜けると石段が見える。一つ一つ丸みを帯び、丹念に積み上げたような手作りの温もりを感じる。左右からシャクナゲ、青紅葉が色を添える。木漏れ日の陰影が石段に模様をつける。見上げれば金堂の檜皮葺の屋根がまるで懐かしいふるさとの家の様に見える。優しい気持ちに包まれて登ってゆく。

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後にこの坂は鎧坂と呼ばれ、乱れ積みという方法で作られていると知る。石段が鎧の横じまに見え金堂の屋根が兜に見えるのが由縁らしい。

 

金堂でお寺の方の説明を受ける。室生寺は戦争や火事で焼けることなく、平安時代鎌倉時代建立当初のままここに立っていると聞く。なぜだろう、古くても寂しく、さびれた感じは全くしない。古さの中に大事に手を掛けてある清浄さ、歴史、趣を感じる。

中に入り国宝の仏像をガラス越しではなくまじかで見る。いつの時代も人間の力ではどうにもならない苦しみ、願いがあっただろう。人々はきっとこの仏像に願いを込めて祈ってきたのだと思う。仏像の中に長い間引き継いで来た人々の思いを感じる。

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国宝を収めた金堂は静かに佇む

金堂の横、弥勒堂はこけら葺き。張り替えたばかりなのだろうか。木板が日に輝き金色に劣らない風情。檜皮葺きとは対照的。金堂、弥勒堂を青紅葉の下に座りしばらく眺める。森の木々に溶け込み佇む姿に心落ち着く。

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こけら葺きの弥勒堂。金堂とは対照的。

灌頂堂の中に入る。薄暗い中仏像がろうそくに照らされて浮かびあがる。お経を唱える人の横で正座し眺める。狭いお堂が不思議な空間に感じる。

徳川家、三つ葉青いの家紋が目につき尋ねる。徳川綱吉継母、桂昌院室生寺の再興に尽力した為、徳川と桂昌院実家の家紋を使っていると聞く。

 

石段を登り五重塔へ。見上げる塔は杉木立の中に凛として立つ。朱塗りの柱と檜皮葺きの屋根が対照的だ。シャクナゲ越しに見る均整と取れた塔は美しい。奥の院への道を歩きながら振り返ると五重塔とその下の灌頂堂の檜皮葺が青紅葉越に見える。思わず立ち止まり写真を撮る。

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奥の院までの石段を見上げると絶壁の様に上へ上へと続いている。そこを高齢の方も一一歩ずつ踏みしめて登ってゆく。頂上の奥の院は清水の舞台の様に崖にそりだしている。奥の院から下を見ると登ってきた石段が真下に見える。下までずっと続いているかの様。外廊下を西側に回ると新緑の室生の里が見える。西の山には空海が如意宝珠を埋めたと伝承されているらしい。昨日行った高野山と離れていても繋がっていた。

 

帰り道に出会った虚無僧の方に話を聞く。虚無僧とは半僧半俗である。尺八の演奏はお経の意味を持つ。その楽譜は梵字で書かれていた。時代劇の中ではなく本物に出会える機会に恵まれた。

 

帰り道山門近くの青紅葉が空高く茂る。5月の日差しが緑色に染まっていた。

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